「自分の意見をはっきり言うべき」を手放す 心が軽くなるヒント
「自分の意見をはっきり言うべき」に縛られていませんか
仕事でも家庭でも、私たちはさまざまな場面で自分の意見を持つことを求められたり、あるいは「きちんとした意見を持つべきだ」「それを伝えるべきだ」と感じたりすることがあります。特に、中間管理職としてチームを率いたり、家庭内で重要な決定に関わったりする立場にあると、この「自分の意見をはっきり言うべき」という思い込みが強くなることもあるかもしれません。
しかし、常に自分の意見を明確に、しかも「はっきり」と伝えることばかりを考えていると、疲れてしまうことがあります。意見を言うべき場面だと感じながらも、周りの反応を恐れたり、うまく言葉にできなかったりして、自分を責めてしまうこともあるかもしれません。
この記事では、「自分の意見をはっきり言うべき」という考えを手放し、もっと心が軽くなるためのヒントをご紹介します。
なぜ「自分の意見をはっきり言うべき」と思ってしまうのか
この「べき」は、責任感や、期待に応えたいという気持ちから生まれることが多いようです。例えば、
- リーダーとしてチームをまとめるためには、明確な方針を示すべきだ
- 親として、子供に正しい価値観を教えるためには、自分の考えをはっきり伝えるべきだ
- 議論に参加するなら、貢献するために意見を述べるべきだ
- 自分の存在価値を示すためには、意見を持つことが重要だ
こうした思いは、真面目で誠実な方ほど抱きやすいものです。しかし、「はっきり」という言葉が加わることで、必要以上に自分を追い込んでしまう可能性があります。
「はっきり言うべき」を手放すための実践ヒント
「自分の意見をはっきり言うべき」という考えから少し距離を置くことで、心が楽になる場合があります。以下に、具体的なヒントをいくつかご紹介します。
1. 「はっきり」の基準を問い直してみる
「はっきり言う」とは、具体的にどのような状態を指すのでしょうか。もしかすると、テレビに出てくるコメンテーターのように淀みなく、論理的に、強く主張することだと思い込んでいるかもしれません。
しかし、日常生活や職場において求められる「はっきり」は、それほど厳密なものではないことが多いものです。自分の感じていることや考えていることを、焦らず、自分の言葉で伝えることから始めてみてはいかがでしょうか。「こう思っているのですが、皆さんはどうでしょうか」「今の状況について、少し気になる点があります」といった、問いかけや率直な感想の形でも、十分に意見を伝えていることになります。
2. 目的は「伝えること」であって「相手を納得させること」ではないと理解する
意見を言う目的は、必ずしも相手を完全に納得させたり、自分の考えを全面的に受け入れてもらったりすることだけではありません。自分の立場や考えを共有すること自体に意味がある場合も多くあります。
「はっきり言って、皆を納得させなければ」と思うと、意見を言うこと自体が重荷になります。そうではなく、「私はこう考えます」「こういう選択肢もあるかもしれません」と、情報として提示するくらいの気持ちで臨むと、心理的なハードルが下がるでしょう。相手がどう受け止めるかは相手次第だと割り切ることも大切です。
3. 沈黙も意思表示の一つだと考える
会議中や話し合いの場で、何も意見を言わないことを「意見がない」「貢献していない」と感じる必要はありません。発言しないという選択も、その場の状況を静観している、他の人の意見を聞いている、同意している、あるいは今は適切ではないと判断しているなど、多様な意思表示の一つと捉えることができます。
もちろん、意見を求められたり、どうしても伝えたいことがあったりする場合は別です。しかし、「何か言わなければ」という強迫観念から解放されるだけで、気持ちはぐっと楽になります。
4. 小さな違和感や「好き・嫌い」を言葉にしてみる
いきなり改まった場で「はっきりした意見」を述べようとするのは難しいかもしれません。まずは、日常生活の中で感じる小さな違和感や、素直な「好き」「嫌い」といった感情を、信頼できる人に言葉で伝えてみる練習をしてみてはいかがでしょうか。
「これ、ちょっと使いにくいなと感じます」「このデザイン、個人的には好みです」といった、些細なことから自分の内側にある感覚をアウトプットする習慣をつけると、自分の意見を「言う」ことへの抵抗感が和らぎます。
5. 意見がまとまっていなくても良いと自分に許可を出す
完璧に論理が構築された、非の打ち所のない意見でなければ言ってはいけない、と思ってしまう必要はありません。「まだ考えがまとまっていないのですが」「仮説の段階ですが」と前置きをしても良いのです。考えを共有することで、かえって議論が深まったり、他の人から助けが得られたりすることもあります。
不完全な意見を言う自分も許容することで、「はっきり言うべき」というプレッシャーは軽減されるでしょう。
手放した先にある軽やかさ
「自分の意見をはっきり言うべき」という考えを手放すことは、「自分の意見を持たない」「何も言わない」ということではありません。これは、「意見の持ち方や伝え方には、多様な選択肢がある」と気づき、自分に合った方法を選べるようになるということです。
完璧な「意見表明」を目指すのではなく、自分の心との対話を大切にし、無理のない形でコミュニケーションを重ねていく。そうすることで、肩の力が抜け、人間関係においても、自分自身に対しても、より穏やかで軽やかな気持ちで向き合えるようになるでしょう。
あなたが、必要以上に自分を縛り付ける「べき」から解放され、自分らしいコミュニケーションを見つけられることを願っています。