「時間がない」と感じる時に手放したい「〜べき」
「時間がない」という感覚に潜む「〜べき」思考とは
日々、仕事や家庭のことに追われていると、「時間がない」と感じる瞬間が多くあるのではないでしょうか。やらなければならないことに囲まれ、常に時間に追い立てられているような感覚。この「時間がない」という感覚は、肉体的な忙しさだけでなく、心の余裕を奪い、知らず知らずのうちに私たちを疲弊させていきます。
そして、この「時間がない」という忙しさの裏側には、「時間をこう使うべき」「自分はこれくらいできるべき」といった、時間や効率、自分自身に対する様々な「〜べき」思考が潜んでいることがあります。例えば、「隙間時間を無駄なく活用するべき」「休憩など取っている暇はない」「他の人よりもっと効率的に動くべき」といった考え方です。
これらの「〜べき」は、一見すると生産性を高めるためのポジティブな指針のように思えます。しかし、それらを自分自身に厳しく課しすぎると、現実とのギャップに苦しんだり、常に焦りを感じたりすることにつながります。「〜べき」に縛られ、「時間がない」という感覚が固定化されることで、心はどんどん重くなってしまいます。
この記事では、「時間がない」と感じる時に手放すと心が軽くなる、「時間」に関する「〜べき」思考と、その具体的な手放し方について考えていきます。
「時間に関するべき」を手放すための実践ヒント
「時間がない」という感覚を和らげ、心の余裕を取り戻すためには、時間そのものを物理的に増やすことよりも、時間に対する捉え方、つまり「〜べき」思考を見直すことが有効な場合があります。ここでは、すぐに試せるいくつかのヒントをご紹介します。
ヒント1:「やることリスト」から「理想の自分」の項目を削除してみる
私たちは無意識のうちに、「常に完璧に家事をこなすべき」「仕事のメールには即座に返信するべき」「資格取得の勉強も毎日続けるべき」といった「理想の自分ならやっているはずのこと」を「やることリスト」に追加していないでしょうか。
まずは、リストの中から「現実的に不可能、あるいは負担が大きい理想論」によって生まれた「〜べき」項目を見つけてみましょう。そして、それらを「やらない」という選択肢を意識的に取り入れてみます。完璧を目指すのではなく、「今日はこれだけできれば十分」と割り切る練習をすることで、リストに追われる感覚が和らぎます。
ヒント2:意図的に「何もしない時間」を許す
「時間がないから、休んでいる場合ではない」「常に何か生産的なことをしているべき」と考えてしまいがちです。しかし、心身の回復には意識的な休息が不可欠です。
短い時間でも構いませんので、スマートフォンも見ずにただぼんやりする、好きなお茶をゆっくり飲む、窓の外を眺めるなど、「何もしない時間」を意図的にスケジュールに組み込んでみましょう。そして、その時間に対して「無駄だ」という罪悪感を抱かないようにします。「何もしないこと」も、心を休ませるための大切な行為だと認識することが第一歩です。
ヒント3:「ここまでで十分」のラインを引いてみる
「やるからには完璧に終えるべき」という考えも、「時間がない」感覚を助長します。終わりが見えないタスクに、いつまでも時間をかけてしまうためです。
例えば、資料作成なら「今日は構成案まで」、部屋の片付けなら「引き出し一つだけ」など、事前に「ここまでやったらOK」という完了のラインを具体的に決めておきます。そして、そのラインに達したら、たとえ完璧でなくてもそこで一度手放してみましょう。終わりの見えないタスクに時間を浪費するのではなく、区切りをつけることで次の行動に移りやすくなります。
ヒント4:他者との比較から一度離れてみる
SNSや周囲の人を見て、「あの人はこんなに忙しいのに完璧にこなしている。それに比べて自分は…」と比較し、「もっと頑張るべき」と思ってしまうことはないでしょうか。
しかし、他者の状況はあくまでその人のものであり、あなたの状況やペースとは異なります。他者と比較して「もっと」と自分を追い込むのではなく、「今の自分にとって無理のないペースはどれくらいか」に意識を向け直してみましょう。自分自身の状況を認め、「これで良い」と許可することで、焦りや劣等感から解放されます。
ヒント5:時には「やらないこと」を決める勇気を持つ
時間がないと感じる最も大きな理由は、抱えているタスクが多すぎることです。「頼まれたことは全て引き受けるべき」「人に任せるべきではない」といった「〜べき」も、タスクを増やし、「時間がない」感覚を強めてしまいます。
本当に必要なこと、自分がやるべきことを見極め、それ以外のことは断る、あるいは他の人に任せるという選択肢を検討しましょう。全てを自分で抱え込む「べき」を手放すことで、心身の負担が軽減され、本当に大切なことに時間を使えるようになります。
心が軽くなる「〜べき」からの解放
「時間がない」という感覚は、多忙な現代社会では避けがたい側面もあります。しかし、その忙しさに対する「〜べき」思考を手放し、時間との付き合い方を見直すことで、心の状態は大きく変わります。
ご紹介したヒントは、どれも特別なことではありません。日々の小さな意識の変化や、少しの行動の調整によって実践できるものです。すぐにすべてを変えようとせず、まずは一つ、ピンとくるものから試してみてはいかがでしょうか。
「〜すべき」という強い縛りから解放され、「〜しても大丈夫」「〜という選択肢もある」と自分に許可を与えられるようになると、凝り固まっていた心が少しずつほぐれていくのを感じられるはずです。時間に対するプレッシャーが和らぎ、心に穏やかな余裕が生まれることを願っています。